
監修者からのコメント

医師
女医によるファミリークリニック 院長
⼤井美恵⼦
身長を伸ばすうえで最も大切なのは、栄養・睡眠・運動の3つをバランスよく整えることです。
成長ホルモンは深い睡眠中に集中して分泌されるため、夜更かしは成長の機会を逃すことにつながります。
食事ではタンパク質・カルシウム・ビタミンDを意識的に摂ることが重要で、特にカルシウムは成長期のピーク時に推奨量が最も高く設定されています。
遺伝の影響は確かに大きいですが、後天的な生活習慣の工夫によって「伸びしろ」を最大限に引き出すことは十分可能です。
気になる点があれば、小児内分泌専門医への早めの相談をおすすめします。
「身長を伸ばしたい」と思って調べてみると、情報があまりにも多くて何を信じればいいのか分からない。
そんな経験はないでしょうか。
「牛乳を飲めば伸びる」「22時までに寝ないとダメ」など、根拠が曖昧な情報も少なくありません。
身長の伸びに関わるのは、大きく分けて「栄養」「睡眠」「運動」の3つです。
この記事では、骨が伸びる仕組みから年齢別の具体的な対策まで、科学的根拠をもとに優先順位をつけて整理しました。
成長期の子ども本人にも、お子さんの成長が気になる保護者の方にも役立つ内容です。
正しい知識を持てば、今からでもできることは十分にあります。
目次
そもそも身長はなぜ伸びる?骨端線と成長ホルモンの仕組み

身長が伸びるという現象は、「骨が長くなること」そのものです。
では、骨はどこで、どのように長くなるのでしょうか。
仕組みを先に理解しておくと、後から紹介する食事・睡眠・運動の話がなぜ効果的なのか、理由がはっきり見えてきます。
骨端線(成長軟骨)が骨を伸ばすメカニズム
骨の両端には「骨端線(こったんせん)」と呼ばれる軟骨の層があります。
レントゲンで撮影すると、骨と骨の間に黒い隙間のように映る部分です。
この骨端線にある軟骨細胞が増殖し、新しい軟骨が作られ、それがやがて硬い骨に置き換わります。
このサイクルが繰り返されることで骨が縦方向に伸び、身長が高くなります。
つまり、骨端線は「身長の伸びしろ」そのものと言えます。
この軟骨細胞の増殖を促しているのが、脳の下垂体から分泌される「成長ホルモン」です。成長ホルモンは肝臓でIGF-1(ソマトメジンC)という物質に変換され、これが骨端線の軟骨細胞に直接働きかけて骨を伸ばします。
つまり、成長ホルモンがしっかり分泌され、それを受け取る骨端線が開いている状態であれば、身長は伸び続ける可能性があるということです。
骨端線はいつ閉じる?男女別の目安年齢
骨端線は成長期を過ぎると徐々に幅が狭くなり、最終的には完全に骨化して閉じます。閉じてしまうと、骨の成長はストップし、身長の伸びも止まります。
一般的な目安としては、男子で17~18歳前後、女子で15~16歳前後に閉じるとされています。
女子のほうが早いのは、思春期の到来が男子より早く、性ホルモンの影響で骨の成熟が先に進むためです。
ただし、個人差は大きく、中には20歳を過ぎても骨端線が確認できるケースもあります。
逆に、思春期が早く始まった場合は、目安より早く閉じることもあります。
骨端線が開いているかどうかは外見からは分からず、レントゲンで確認するしかありません。
気になる場合は、低身長外来のある医療機関で相談してみるのが確実です。
遺伝の影響は何割?後天的に変えられる部分を知る
「結局、身長は遺伝で決まるんでしょ?」という声は多いです。
確かに遺伝の影響は大きいのですが、それがすべてではありません。
ここでは、遺伝と後天的な要因の関係を整理します。
遺伝が身長に与える影響は約7~8割
多くの研究で、身長の個人差のうち約70~80%は遺伝的な要因で決まるとされています。
2022年には、大阪大学を中心とする国際共同研究グループが約540万人を対象にしたゲノム解析を行い、身長に関連する約12,000箇所の遺伝子領域を特定しました※1。
この研究でも、身長の遺伝的背景が人種を超えて共有されていることが確認されています。
ただし、「遺伝率が8割」という数字は、しばしば誤解されます。
これは「親の身長が子どもに8割伝わる」という意味ではなく、「集団全体の身長のばらつきのうち、8割が遺伝的な差異で説明できる」という統計的な概念です。
同じ両親から生まれた兄弟でも身長が異なることがあるように、遺伝だけで個人の最終身長が確定するわけではありません。
残りの2~3割を最大化するという考え方
裏を返せば、身長の2~3割は栄養・睡眠・運動・生活環境といった後天的な要因で変わる余地があるということです。
たとえば、日本人の平均身長は戦後から1990年代にかけて大きく伸びました。
これは遺伝子が変化したのではなく、栄養状態の改善が主な要因です。
逆に近年は、子どもの平均身長が横ばいから微減傾向にあるという報告もあり、運動量の減少や睡眠時間の短縮が影響している可能性が指摘されています。
「遺伝だから仕方ない」と諦めるのではなく、後天的な2~3割をどこまで引き出せるかが大切です。
次のセクションから、具体的な方法を優先順位つきで紹介していきます。
【最重要】身長を伸ばす食事と栄養の摂り方

身長を伸ばすための3本柱のうち、最も影響が大きいのが食事と栄養です。
骨や筋肉の材料を体に届けるのは、毎日の食事にほかなりません。
タンパク質が骨の土台をつくる理由
骨というと「カルシウム」をイメージする人が多いかもしれませんが、実は骨の土台はタンパク質(コラーゲン)でできています。
タンパク質で作られた網目状の構造にカルシウムが沈着することで、硬くて丈夫な骨が完成します。
また、タンパク質を構成するアミノ酸は、成長ホルモンの分泌を促す働きもあります。
成長期の子どもは体重1kgあたり1.5~2g程度のタンパク質が必要とされ、肉・魚・卵・大豆製品・乳製品をバランスよく摂ることが重要です。
カルシウム・ビタミンD・亜鉛・マグネシウムの役割と食材
骨の成長に関わる栄養素はタンパク質だけではありません。
主な栄養素の役割と多く含まれる食材の概要を整理します。各栄養素の詳しい摂取量・食材・吸収率を高める食べ方については、関連記事「身長が伸びる食べ物と栄養素」をあわせてご覧ください。
- カルシウム: 骨の硬さを作るミネラル。牛乳・チーズ・小松菜・ししゃも・豆腐などに豊富。
- ビタミンD: 腸でのカルシウム吸収を助ける。鮭・さんま・きのこ類に含まれるほか、日光浴でも体内で合成される。
- 亜鉛: 細胞の分裂・成長に関与し、成長ホルモンの働きをサポートする。牡蠣・牛肉・レバー・ナッツ類に多い。
- マグネシウム: カルシウムの代謝を調整し、骨への沈着を促す。海藻・ナッツ・バナナ・玄米などに含まれる。
これらの栄養素は単体で摂るよりも、組み合わせて摂ることで吸収率が上がります。
たとえば、鮭のホイル焼きにきのこを添えれば、タンパク質・ビタミンD・カルシウムを一度に摂取できます。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」 によると、特にカルシウムは成長期(12~14歳男子)の推奨量が1日1,000mgと全年代で最も高く設定されていますが、実際の平均摂取量はそれを大きく下回っています。意識的な摂取が必要です。
アルギニンと成長ホルモンの関係
アルギニンはアミノ酸の一種で、成長ホルモンの分泌を刺激する作用があるとされています。大豆製品・鶏肉・エビ・ナッツ類などに多く含まれます。
ただし注意点があります。
医療現場で行う「成長ホルモン分泌刺激試験」ではアルギニンを静脈注射で大量に投与しますが、これは食事やサプリメントで摂取する量とはまったくレベルが異なります。
日常的にアルギニンを含む食品を食べることは栄養バランスの面で有益ですが、「アルギニンを飲めば身長が伸びる」という単純な話ではない点は押さえておきましょう。
食事のタイミングと朝食を抜かないことの重要性
何を食べるかだけでなく、いつ食べるかも大切です。朝食を抜くと、午前中にエネルギーや栄養素が不足し、体の成長に必要な代謝がうまく回りません。
文部科学省の調査 でも、毎日朝食を食べる子どもほど学力や体力が高い傾向が確認されています。
また、寝る直前の食事も避けたいところです。
胃に食べ物が残った状態で寝ると、消化活動で体が休まらず、深い睡眠が妨げられます。
成長ホルモンの分泌に影響するため、夕食は就寝の2~3時間前までに済ませるのが理想です。
成長ホルモンを最大限引き出す睡眠のとり方

栄養の次に重要なのが睡眠です。成長ホルモンは1日を通じて分泌されますが、その多くが睡眠中、特に深い眠りの段階で集中的に分泌されます。
入眠後2~3時間の深い睡眠がカギ
成長ホルモンの分泌は、寝ついてから最初に訪れる深いノンレム睡眠(徐波睡眠)の時間帯にピークを迎えます。
研究によれば、若年男性では1日の成長ホルモン分泌量のうち約60~70%が睡眠中に分泌されるとされています。
ここで大事なのは、「何時に寝るか」よりも「いかに深く眠るか」です。
かつて「22時~2時がゴールデンタイム」と言われましたが、これは睡眠研究で21時就寝を条件にした実験結果が一人歩きしたもの。
実際には、成長ホルモンの分泌は時刻ではなく、入眠後の深い睡眠の質に依存しています。とはいえ、夜更かしが常態化すると睡眠時間そのものが短くなり、深い睡眠を得る機会が減ってしまうため、早めの就寝が望ましいことに変わりはありません。
年齢別の推奨睡眠時間
厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、子どもの推奨睡眠時間を以下のように定めています。
- 1~2歳:11~14時間(昼寝含む)
- 3~5歳:10~13時間(昼寝含む)
- 小学生:9~12時間
- 中学・高校生:8~10時間
日本の子どもの平均睡眠時間は過去30年間で約30分減少しており、推奨時間に達していない子どもも少なくありません。
「睡眠を削って勉強」は、成長の面でも学力の面でも逆効果です。
就寝前のスマホ・満腹就寝が成長を妨げる理由
スマホやタブレットから出るブルーライトは、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を抑制します。
メラトニンの分泌が遅れると寝つきが悪くなり、最初の深い睡眠の質が下がります。
就寝1時間前にはデジタル機器の使用をやめ、部屋の照明も落とすのが理想です。
また先述のとおり、就寝直前の食事は消化器官を活動させるため、深い睡眠を妨げます。
寝室にスマホを持ち込まないことと、夕食と就寝の間に2~3時間の間隔を確保すること。
この2つを習慣にするだけでも、睡眠の質はかなり改善します。
骨への刺激が成長を促す|運動の選び方と注意点
3本柱の3つ目は運動です。適度な運動は骨端線の軟骨細胞に物理的な刺激を与え、成長ホルモンの分泌も促進します。
縦方向の負荷がある運動が効果的な理由
骨は、縦方向の負荷がかかると、それに適応して成長しやすくなることが知られています。
ジャンプやランニングなど、地面からの衝撃が骨に伝わる運動が代表的です。
これは骨に適度なストレスがかかることで、骨芽細胞(新しい骨を作る細胞)が活性化するためです。
「骨を使えば使うほど強くなる」という仕組みは、成長期の骨の伸びにもプラスに働きます。
成長をサポートしやすいスポーツと日常の工夫
バスケットボール、バレーボール、水泳、縄跳び、ジョギングなどは、全身をバランスよく使いながら骨に刺激を与えるスポーツです。
ただし、特定のスポーツをしなければ伸びないということではありません。
公園で走り回る、階段を積極的に使う、なわとびを日課にするといった日常的な工夫でも十分に効果は期待できます。
大切なのは、「体を動かす時間を毎日確保すること」です。
過度な筋トレが逆効果になるケース
「筋トレをすると背が伸びなくなる」とよく言われますが、これは半分正しく、半分誤りです。
適度な負荷の筋力トレーニングは、成長ホルモンの分泌を促進し、骨の発達にも良い影響を与えます。
ただし、成長期の子どもが自分の体重をはるかに超えるような高重量のウェイトトレーニングを行うと、骨端線に過剰な負荷がかかり、損傷のリスクがあります。
成長期の筋トレは自重トレーニングを中心にし、過度な負荷は避けるのが安全です。
身長の伸びを止める「やってはいけないこと」
伸ばすための努力と同じくらい大切なのが、「成長を妨げる習慣をやめること」です。
知らず知らずのうちに、成長にブレーキをかけている行動があるかもしれません。
夜更かし・ジャンクフード・寝る直前の食事
夜更かしが睡眠の質を落とすことはすでに触れたとおりです。
加えて、ジャンクフードやスナック菓子を頻繁に食べる食生活も問題です。
カロリーは足りていても、骨の成長に必要なタンパク質・ビタミン・ミネラルが不足する「新型栄養失調」の状態になりかねません。
また、夜食の習慣にも注意が必要です。寝る直前に食べると、消化のために胃腸が働き続け、深い睡眠を阻害します。
どうしてもお腹が空いた場合は、消化の良いものを少量にとどめましょう。
過度なストレスとコルチゾールの影響
慢性的なストレスを受けると、体内ではコルチゾール(ストレスホルモン)の分泌が増えます。
コルチゾールは成長ホルモンの分泌を抑制する作用があるため、長期的なストレス環境は身長の伸びに悪影響を及ぼす可能性があります。
勉強のプレッシャー、人間関係のトラブル、家庭内の不和など、子どもは意外と多くのストレスを抱えています。
身長を伸ばすための「食事・睡眠・運動」に加えて、子どもが安心して過ごせる環境づくりも、成長を支える大切な要素です。
栄養補助としてのサプリメント|選び方と正しい位置づけ
食事パートで触れたとおり、成長期に必要な栄養素を食事だけで完全にまかなうのは簡単ではありません。
ここでは、サプリメントをどう考えるべきかを整理します。
サプリメントは「魔法の薬」ではなく「食事の補助」
まず前提として、サプリメントを飲むだけで身長が伸びるということはありません。
日本小児内分泌学会も、科学的根拠が不十分な「身長が伸びる」とうたう製品に対して注意喚起を行っています。
サプリメントの正しい位置づけは、「食事で足りない分を補助する手段」です。
バランスの良い食事を基本としたうえで、どうしても不足しがちな栄養素をサプリメントで補うという考え方が適切です。
成長期に不足しやすい栄養素とサプリメントで補う考え方
前述のとおり、カルシウム・ビタミンD・鉄・亜鉛は、日本の子どもの食事で不足しやすい栄養素として知られています。
特に偏食がある子どもや、牛乳・乳製品が苦手な子ども、運動量が多くて消費が激しい子どもは、食事だけでは推奨量に届かないケースがあります。
そのような場合に、栄養素を補う目的でサプリメントを活用するのは合理的な選択です。
ただし、サプリメントに頼りすぎて食事がおろそかになるのは本末転倒。
あくまで「食事が主、サプリメントは従」のバランスを守りましょう。
信頼できるサプリメントを見分けるポイント
成長期向けのサプリメントを選ぶ際は、以下の点を確認することをおすすめします。
- 配合されている栄養素と含有量が明記されているか
- GMP認定工場など、品質管理基準を満たした環境で製造されているか
- 誇大な表現(「飲むだけで10cm伸びる」など)を使っていないか
- 第三者機関による成分検査を受けているか
「効果がありそうな雰囲気」ではなく、成分表示や製造基準といった客観的な情報をもとに判断することが大切です。
よくある俗説を検証する
身長に関する情報は、正しいものと根拠のないものが混在しています。
よく聞く俗説を科学的に整理しておきましょう。
「牛乳をたくさん飲めば伸びる」は本当か
牛乳にはカルシウムやタンパク質が豊富に含まれており、成長にとって優れた食品であることは間違いありません。
しかし、「牛乳さえ飲んでいれば背が伸びる」というのは正確ではありません。
カルシウムは骨を強くする栄養素ですが、骨を「伸ばす」作用があるわけではありません。
骨を伸ばすのはあくまで成長ホルモンとIGF-1の働きであり、そのためにはタンパク質やビタミンD、亜鉛なども含めた総合的な栄養摂取が必要です。
牛乳は「成長に役立つ食品のひとつ」として位置づけるのが正確です。
「ぶら下がると伸びる」の科学的評価
鉄棒にぶら下がると、一時的に背骨の椎間板が伸びて身長がわずかに高くなることはあります。
しかしこれは骨が伸びたわけではなく、重力で圧縮されていた椎間板が元に戻っただけの現象です。
降りればすぐに元の身長に戻ります。
ぶら下がり運動自体は握力や背筋の強化に良いトレーニングですが、「骨端線が伸びて身長が伸びる」という効果は確認されていません。
「22時~2時がゴールデンタイム」の誤解
睡眠パートでも触れましたが、成長ホルモンの分泌は特定の時刻に紐づいているわけではありません。
重要なのは「入眠後最初の深いノンレム睡眠」の質です。
何時に寝ても、深い眠りに入れれば成長ホルモンは分泌されます。
ただし、これを「何時に寝ても同じ」と解釈するのは間違いです。
夜更かしをすれば睡眠時間が短くなり、総合的な成長ホルモンの分泌量が減る可能性があります。
規則正しい生活リズムを保ち、十分な睡眠時間を確保することが最も大切です。
大人でも身長は伸ばせる?姿勢改善で取り戻す方法
骨端線が閉じた大人の場合、残念ながら骨そのものを伸ばすことはできません。
しかし、姿勢の改善によって「本来の身長」を取り戻すことは可能です。
猫背・O脚の矯正で2~3cm変わるケース
猫背の人は背骨が前方に丸まり、本来の身長よりも数cm低く見えていることがあります。
また、O脚も膝が外側に開くことで脚の長さを損しています。
姿勢の矯正に取り組んだことで、実測身長が2~3cm高くなったというケースは珍しくありません。
骨が伸びたわけではなく、曲がっていた背骨や脚がまっすぐになったことで、本来の身長が戻ったという現象です。
背骨・股関節まわりのストレッチの続け方
姿勢改善に効果的なのは、胸を開くストレッチ、背骨を伸ばすキャットカウポーズ、股関節まわりの柔軟体操などです。
1回で劇的に変わるものではなく、毎日5~10分を習慣として続けることがポイントです。
デスクワークやスマホ操作で前かがみの姿勢が続く人は、1時間に1回は立ち上がって背伸びをするだけでも違います。
姿勢の良さは見た目の印象だけでなく、肩こりや腰痛の予防にもつながるため、成長期を過ぎた大人にこそ意識してほしい習慣です。
低身長が気になるときの受診の目安
生活習慣の改善だけでは対応できない場合もあります。
医療的なアプローチが必要なケースについて知っておくことも大切です。
成長曲線の読み方と低身長症の医学的基準
母子手帳や学校の身体測定の記録から、お子さんの身長を「成長曲線」に記入してみてください。
同年齢の子どもの中で身長が下から2.3%以下(-2SD以下)に該当する場合、医学的に「低身長」と定義されます。
数値だけでなく、「以前は平均的だったのに急にカーブが下がってきた」「1年間で4cm以下しか伸びていない」といった成長速度の変化も重要なサインです。
低身長外来・成長ホルモン治療という選択肢
低身長の原因として、成長ホルモン分泌不全症や甲状腺機能低下症、ターナー症候群など、治療が可能な疾患が隠れている場合があります。
骨年齢が男子17歳以上、女子15歳以上になると骨端線が閉鎖し、成長ホルモン治療の効果は期待できなくなります。
つまり、治療を受けるなら早いほうが選択肢が広がります。男子で11歳まで、女子で10歳までに一度は専門医を受診しておくと安心です。
「もう少し様子を見よう」と先延ばしにするよりも、早めに相談して問題がなければ安心できますし、治療が必要なら早期に開始できます。
身長予測の計算式と年齢別アクションまとめ

最後に、身長の予測方法と、年齢別に「今やるべきこと」を整理します。
両親の身長から最終身長を予測する計算式
両親の身長から子どもの予測身長を算出する代表的な計算式(Target Height式)は以下のとおりです。
- 男子:(父親の身長 + 母親の身長 + 13)÷ 2
- 女子:(父親の身長 + 母親の身長 ~ 13)÷ 2
たとえば、父親が170cm、母親が158cmの場合、男子の予測身長は(170 + 158 + 13)÷ 2 = 170.5cmとなります。
ただし、この数値には男子で±9cm、女子で±8cm程度の変動幅があります。
つまり、生活習慣次第で最終身長は大きく変わりうるということです。
この計算式はあくまで統計的な目安であり、個人の成長を正確に予測するものではありません。
気になる場合は、骨年齢なども含めた医学的な評価を専門医に依頼しましょう。
小学生・中学生・高校生・大人別「今やるべきこと」
小学生(6~12歳): 成長のゴールデンエイジ。3食バランスよく食べ、外遊びや運動を積極的に。睡眠は9~12時間確保。
カルシウムとタンパク質を意識した食事が特に重要な時期です。
中学生(12~15歳): 成長スパートのピーク。部活や勉強で忙しくても、睡眠時間(8~10時間)の確保を最優先に。
夜食やスマホの就寝前使用は控える。女子はこの時期に骨端線が閉じ始めるため、栄養面の意識をより高めましょう。
高校生(15~18歳): 男子にとって最後の成長期。栄養バランスを維持し、過度な減量(部活の体重制限など)を避ける。
規則正しい生活リズムが成長の最後の伸びを左右します。
大人(18歳以上): 骨の成長は見込めないが、姿勢改善で本来の身長を取り戻せる可能性あり。
猫背・O脚の矯正ストレッチを日課にすることで、見た目の印象も変わります。
まとめ
身長を伸ばすために大切なことは、「栄養」「睡眠」「運動」の3本柱をバランスよく整えることです。
- 骨の成長には骨端線と成長ホルモンが関わっており、骨端線が開いている成長期のうちに行動することが重要
- 遺伝の影響は約7~8割だが、残りの2~3割は後天的な努力で変えられる
- タンパク質・カルシウム・ビタミンD・亜鉛を中心にバランスの良い食事を心がける
- 入眠後の深い睡眠が成長ホルモンの分泌のカギ。年齢に応じた十分な睡眠時間を確保する
- 縦方向の刺激がある運動を日常に取り入れ、骨への刺激を与える
- 夜更かし・ジャンクフード・過度なストレスなど、成長を妨げる習慣を見直す
- 食事で足りない栄養素は、サプリメントで「補助的に補う」という考え方も選択肢のひとつ
身長は遺伝だけで決まるものではありません。
毎日の小さな積み重ねが、将来の数センチの差を生みます。
この記事で紹介した内容の中から、今日からできることをひとつでも取り入れてみてください。
参考・出典
※1 大阪大学・理化学研究所「世界最大規模のゲノム解析で身長の遺伝的背景を解明」(Nature掲載、2022年)
文部科学省「学校保健統計調査」(身長の年次推移データ)
文部科学省(スポーツ庁)「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」(最新:令和6年度)
日本医学雑誌(Jmedj)「 睡眠と成長ホルモン分泌」(専門文献)
免責事項
本記事は、医療的・科学的な情報提供および一般的な知識の普及を目的としており、医師による個別の診断、治療、医学的なアドバイスに代わるものではありません。 記事内で紹介している対策、生活習慣の改善、サプリメント等の栄養補助食品の摂取による効果や体感には個人差があり、特定の疾患の予防・治療、あるいは身長の伸びを確実に保証するものではありません。 お子さまの発育や健康状態についてご不安な点がある場合は、自己判断せず、速やかに小児科または小児内分泌科の専門医にご相談ください。 本サイトの情報を利用したことによって生じるいかなる損害についても、当サイトおよび監修医師は一切の責任を負いかねます。
この記事の監修

医師
女医によるファミリークリニック 院長
⼤井美恵⼦
●金沢医科大学卒業後、広島市立広島市民病院小児科医として経験を積み、2016年に姉と共に「女医によるファミリークリニック」を広島市で開業。小児科・内科・皮膚科・アレルギー科を診療し、家族全員の健康を支えるホームドクターを目指しています 。
●所属学会・資格
・日本小児科学会
・日本周産期新生児医学会
・日本小児神経学会
・日本小児皮膚科学会
・日本小児科医会
・小児慢性特定疾患指定医
・広島県小児科医会
・赤ちゃん成育ネットワーク・子どもの心相談医
・難病指定医
・キレーション認定医
・高濃度ビタミンC点滴療法認定医新生児蘇生法専門コース認定医
・日本リウマチ学会
・抗加齢医学会
・高濃度ビタミンC点滴療法学会
・日本アレルギー学会
・点滴療法研究会
●メディア出演
・テレビ朝日(羽鳥慎一のモーニングショー)
・フジテレビ(Live News イット!) など多数



